ビオチンは、単独で摂取するよりも、特定の栄養素と組み合わせることで、その効果を飛躍的に高めることができると言われています。その代表的な組み合わせとして、皮膚科領域で注目されているのが「ビオチン療法」です。これは、主に掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)やアトピー性皮膚炎といった、難治性の皮膚疾患の治療の一環として行われるもので、「ビオチン」「ビタミンC」「ミヤリサン(酪酸菌)」の三つを同時に摂取することを基本とします。なぜ、この三つの組み合わせが重要なのでしょうか。その背景には、それぞれの成分が持つ役割と、見事な相乗効果があります。まず、主役である「ビオチン」は、前述の通り、皮膚のターンオーバーを正常化し、炎症を抑制する働きを持ちます。次に、「ビタミンC」です。ビタミンCは、強力な抗酸化作用を持ち、皮膚の炎症によって発生する活性酸素を除去してくれます。さらに、肌のハリを保つコラーゲンの生成に不可欠な栄養素でもあります。ビオチンがコラーゲンの材料となるアミノ酸の代謝を助け、ビタミンCがそのコラーゲンを実際に合成する。この二つは、美肌作りにおいて、まさに二人三脚のパートナーなのです。そして、この治療法において、非常にユニークで重要な役割を担うのが、「ミヤリサン」に代表される「善玉菌(特に酪酸菌)」です。ビオチンは、食事から摂取するだけでなく、実は私たちの腸内にいる善玉菌によっても、体内で合成されています。しかし、抗生物質の長期服用や、食生活の乱れ、ストレスなどによって腸内環境が悪化し、悪玉菌が優勢になると、このビオチンの産生能力が低下してしまいます。ミヤリサン(酪酸菌)を摂取することで、腸内環境を整え、善玉菌を増やすと、ビオチンの吸収率が高まるだけでなく、腸内でのビオチン産生もサポートされると考えられているのです。悪玉菌は、ビオチンを餌として食べてしまうため、腸内環境を整えることは、ビオチンを守る上でも非常に重要です。この「ビオチン療法」の考え方は、特定の疾患がない方でも、日々の食生活に応用できます。ビオチンが豊富な食品と、ビタミンCが豊富な野菜や果物、そして発酵食品や食物繊維といった腸内環境を整える食品を、意識的に一緒に摂ること。それが、ビオチンの効果を最大限に引き出すための、賢い食事術と言えるでしょう。