マンションの排水管は、大きく「専有部分」と「共用部分」に分けられ、それぞれ維持管理の責任範囲が異なります。この区別を理解することは、排水トラブルが発生した際に誰が費用を負担するのか、誰に連絡すべきかを知る上で非常に重要です。専有部分の排水管とは、一般的に各住戸の部屋の内部にあり、その住戸のみが使用する部分を指します。具体的には、キッチンシンク、浴室、洗面台、洗濯機置場などから排水されて、各住戸の専用の縦主管に接続されるまでの横枝管がこれに該当します。この専有部分の排水管における詰まりや破損などのトラブルは、原則としてその住戸の区分所有者(居住者)に維持管理の責任があり、修理費用も自己負担となります。一方、共用部分の排水管は、複数の住戸が共用で使用する部分であり、マンション全体の資産として扱われます。これには、各階の横枝管が集まる「縦主管」や、建物全体からの排水を最終的に外部へ排出する「横主管」、そしてそれらを収める「パイプスペース(PS)」などが含まれます。共用部分の排水管におけるトラブルは、マンション全体の利害に関わるため、管理組合が維持管理の責任を負い、修理費用は管理費や修繕積立金から充当されるのが一般的です。ただし、専有部分と共用部分の境界線は、マンションの管理規約によって細かく定められている場合が多いです。例えば、「躯体との接続部分までが専有部」とされているケースや、「コンクリートスラブを貫通する部分から共用部」とされているケースなど、マンションによって基準が異なるため、自身のマンションの管理規約を確認することが最も確実です。排水トラブルが発生した際は、まず発生場所を確認し、専有部分か共用部分かを判断した上で、管理会社や管理組合に連絡を入れることが賢明です。安易に自己判断で修理を進めると、費用の負担や責任の所在でトラブルになる可能性もあるため、注意が必要です。
専有部と共用部、マンション排水管の責任範囲