春先に発見される小さなキイロスズメバチの巣は、時間の経過とともにその姿を変え、比例するようにして危険度も増大していきます。彼らの巣のライフサイクルを理解することは、その脅威の変遷を理解することに他なりません。物語は春、冬眠から目覚めた一匹の女王蜂から始まります。四月から六月にかけて、女王蜂は単独で巣作りを開始します。この時期の巣はまだ小さく、働き蜂もいないため、巣の危険度は比較的低い状態です。しかし、最初の働き蜂が羽化する六月頃から、状況は一変します。巣作りや餌集めは働き蜂の仕事となり、女王蜂は産卵に専念するようになります。ここから巣は驚異的なスピードで成長を始めます。七月から八月にかけての夏本番、巣は日に日に大きくなり、働き蜂の数も数十匹から数百匹へと増加します。巣を守ろうとする防衛本能が強まり始め、巣に近づくものに対して威嚇や攻撃を行うようになります。この時期から、巣は明確な脅威としての性格を帯び始めるのです。そして、九月から十月にかけての秋、キイロスズメバチの巣は最盛期を迎えます。巣の大きさは直径五十センチを超えることもあり、内部には数百、時には千を超える働き蜂がひしめき合っています。この時期は、次世代の女王蜂とオス蜂を育てるための非常に重要な季節であり、巣全体が極めて神経質かつ攻撃的になります。巣に数メートル近づいただけでも、見張り役の蜂が警告を発し、それを無視すれば容赦のない集団攻撃を受けることになります。この最盛期の巣が、最も危険な状態です。やがて冬が近づくと、新女王蜂は巣を離れて越冬場所を探し、古い女王蜂や働き蜂、オス蜂は寒さとともにその一生を終えます。巨大だった巣はもぬけの殻となり、二度と再利用されることはありません。春の小さな始まりから秋の凶暴な頂点まで、彼らの巣は季節とともにその危険性を変えていく、生きた要塞なのです。
キイロスズメバチの巣の危険な成長